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行き合いの空

 

このたびの台風21号、また北海道地震におきまして被害にあわれた方にお見舞い申し上げます。一日も早く、こころとからだの平穏を取り戻されますよう、お祈りいたします。

 

9月に入り暑い日が続いていますが、さわやかな風を感じる日も多くなりました。少しずつ秋の空気が混ざりはじめたようです。

 

「行き合いの空」という言葉をご存知でしょうか。

 「行き合い」という言葉の意味が「出会うこと、またその時や場所」「季節の変わり目」ということですが、季節の変わり目のなかでも特に、「夏と秋の変わり目」を意味する場合が多いそうです。

 

「行き合いの空」とは、「夏から秋へと移り変わるころの空」・・・ を言うそうです。

 確かに、夏の終わりを感じさせるころの空は、雲の様子や空の色なども真夏のころとは違います。真夏のもくもくとした岩のような雲と、さらさらと砂のように流れている秋の雲が混在し、空の青さも強い青さから少しだけ柔らかくなって、空の高さを感じます。

 

季節の変わり目のなかでも、特に夏から秋へ移り変わるときの空を「行き合いの空」というのは、この夏と秋の入り混じった様子がよく見られるからでしょうか。季節の移り変わりをよりはっきり感じられるころだからかもしれません。

 

それにしても、日本語は美しいと思います。「行き合いの空」・・・ なんとも素敵な言葉です。四季の豊かな大地で季節の移ろいを感じながら紡がれた言葉だからこそ、こうして季節を感じさせる言葉が多くあるのでしょう。

 

もう一つ、「行き合いの空」には「牽牛星と織女星が出会う七夕の空」という意味合いもあるそうです。「出会い」を意味する「行き合い」ですから、それももっともなことでしょう。

また、旧暦の77日はすでに秋、「七夕」も秋の季語ですから、これもまた夏から秋への移り変わりを感じさせますね。

 

晴れた日、「行き合いの空」をのんびり眺めてみてもいいかもしれません。まだまだ暑い夏の空気のなかにも、秋のさわやかな空気を感じ取ることができるのでは・・・

 

 夏衣片へ涼しくなりぬなり夜や更けぬらん行き合いの空 新古今和歌集